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本庶佑『ゲノムが語る生命像』
【書誌】
- 著者:本庶佑
- 発行所:講談社(ブルーバックス)
- 出版年:2013年01月18日(第1刷)
- 定価:1,034円(本体940円)
- ISBN:978-4-06-257800-4
コメント
ノーベル医学生理学賞受賞者でもある著者による生命科学の入門書。
ブルーバックスシリーズだけあり,最先端の研究を手掛けておられる著者が,遺伝法則の発見やDNAの二重らせん構造の発見といった生命科学の発展の歴史から,ノーベル賞受賞にもつながったPD-1によるがん治療まで,できるだけ平易に,流れが分かるように書いた一冊です。第一線の研究者が書いているだけあり,新書版に圧縮しながらも,遺伝子工学に用いられる研究成果(生体内でのたんぱく質の観察とかDNA増幅の方法とか)や酵素を用いたDNAの組換えなど,生命科学の重要なところが生き生きと書かれています。あと,ゲノムに情報がすべて表れているはずにもかかわらず,生物学は化学や物理学に比べて不確定な部分が多いというのも興味深いところです。
もっとも,最先端を行く研究者だからか,ブルーバックスとはいえ,ところどころ一定の前提を要求している箇所があるような気もします(特に生命科学の展開について書かれている1章から4章)。分からない言葉が出てきたら,今の時代検索は楽ですから,調べたほうがよいでしょう。
最後の方は,著者が研究にかける思い,今後の見通しも語られています。がんの免疫療法の研究に当たって,怪しげな民間療法が障害になっていたというようなことも書かれ,変な民間療法が患者のみならず研究にも邪魔になるのかと思わされたり…
先行研究では,誰がどういう研究をしたのか,丁寧に触れられている辺りから,本庶先生が先行研究に大変敬意を払われる方だと読み取れる一冊です。これまでの研究の要点が概観できる面白い一冊なので,お勧めしたいと思います。
by Q.Urah