書評>礒崎陽輔『分かりやすい公用文の書き方 改訂版』

『分かりやすい公用文の書き方 改訂版』

bookcover

【書誌】

コメント

 元自治・総務官僚であり,現参議院議員の著者が,公用文の書き方(用字法,句読点等)について概説した一冊。

 わたくしの場合は,公用文の文体に厳密に拘束されることはないので,修習で配属庁に置いてあったのを昼休み等でパラパラと呼んで参考にした程度ですが,公務員だとこういう一つの指針があると便利なのだろうなあと思いました。

 本書は,公用文の文体について,具体例を示しながら,どういうものが適切とされているか示しているので,題名に違わず公用文の書き方がわかりやすく示されています。また,著者の文自体も,公用文の文体を意識しており,一文の長さも適切です。起案等で一文が長くなってしまいがちだという方は,目を通してみると良いでしょう。もっとも,外来語の置き換えについては,発行年が少々前ということもあり,現在とは感覚が異なるように感じました。あと,紙幅の都合か,参照してもしばしば「ここってどうなってるんだろう?」と思う箇所が出てきます。より詳しい情報は文化庁の「公用文の書き方資料集」を参照すると良いのでしょう。

 著者の名前をどこかで拝見したことがあるなあと思っていたら,Twitterで少々炎上していたような気もしますが,本書については,公用文の分かりやすい書き方を示したものとして,十分に評価できるものだと思います。とはいえ,本書でも述べられていますが,結局のところ公用文の書き方はOJTに依拠するところも大きいということで,書き方を身に着けるには,実際に公用文を書かなければならない環境に身を置くのが一番良いのでしょう。あと,著者も触れていますが,本書は国語のあり方としてかくあるべきということを述べた本でもありません。特段の事情がなければ,別に公用文の文体に日常から拘束される必要もないのだと思います。

 公用文の形式に従って文書を書きたい人は,手許に置いておくと良い一冊だと思います。

by Q.Urah