書評>窪田充見『家族法(第4版)』

『家族法(第4版)』

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【書誌】

コメント

 窪田先生の法教連載を踏まえ,大幅加筆された親族法・相続法の基本書。

 家族法部分の法改正も踏まえた改訂がなされており,親族法・相続法が全体的に記載された基本書です。親族法のみ,相続法のみの基本書もあるところ,本書は両方をカバーしています。法教連載では相続法が少なかったとのことですが,本書ではしっかり加筆されており,相続法も充実した記載になっています。

 本書も窪田先生の軽快かつ丁寧な記載で書かれており,親族法・相続法の全体像をつかむのには適した一冊だと思います。また,不法行為法よりも全体的にすっきりとした記載であり,読みやすくなっていると思います。さらに,生殖補助医療について第11講で触れられていたり,各所にコラムがちりばめられていたりと,先端的,発展的内容についても記載があるため,条文と判例の記載に加え,さらに一歩踏み込んだ点の記載もなされています。最後の佐藤英明先生との対談も,租税法との交錯が書かれており,興味深い内容です(ここは実務に接したほうがイメージがしやすいところとも思います)。

 もっとも,引用については不法行為法と同様に抑えられており,この点は脚注に文献や裁判例等を記載していただければより良かったと思います。また,基本書としては条文の記載プラスアルファを書くしかない部分もあり,離婚とか相続とかは,実務書が守備範囲とする部分があると思います。そうしたものは,実務書を参照したほうがよいところです(本書はあくまで基本書であるので,実務書の守備範囲までカバーしていなくとも,本書の価値を下げるものではありません。)。

 家族法は,学部で必修になっていなかったり,法科大学院でもオマケ的に触れるに留まったりする分野です(しかも,資格試験でもメインにならないと思います。)。しかし,家族法は,だれでも関係するところであり,体系立てて書かれた本が手許にあることは有益であると思います。本書は,手許に置く一冊として適しているのではないでしょうか。

by Q.Urah