書評>大橋洋一『法学テキストの読み方』

『法学テキストの読み方』

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【書誌】

コメント

 行政法研究者の第一人者である著者が,法学部・法科大学院未修者向けに法学テキストの読み方について記した一冊。

 Q&A形式で記載がなされ,高校までの教科書とはどう違うのか,テキストは買って用意したほうがよいのか,テキストをどう読んでいくのかなど,よくある疑問に丁寧に回答しています。また,「予備校本ではだめですか?」(Q4)という,従来から喧々諤々と議論されつつ,活字で研究者が回答したものは少ない問いに対しても,単に予備校本をけなすだけではなく,真摯かつ丁寧な回答がなされています。

 本書は,初学者が気になる点を十分に回答しており,学生が買うには高い法学の基本書等をなぜ購入するのか,納得できる説明がされていると思います。また,「テキストの読み方」としつつ,条文(Q14)や判例(Q19)の重要性にもしっかり触れているので,この意味でも学習の導入として優れています

 初学者向けに,法学テキストについて,今まで言われてきた話を整理して,平易に言語化したというものなので,法学部への進学を考えている人,法科大学院の未修者及びこうした人たちに講義を行う教職員以外はそれほど買う必要はない書籍かと思います。あと,及びと並びにの大小関係について,訂正情報が出ているのでこの点はお間違いのないようにされた方がよいと思います。

 Twitterなどでも,法学部の学生などと接する機会の多い先生方が勧めていらっしゃる本であり,これから法学部に進学される方,法科大学院の未修者コースに進まれる方は読まれるとよいのではないかと思います。

 (そういえば,行政法のステップアップの例が藤田宙靖先生の『行政法入門』から『行政法総論』なのはかなり飛躍があるような…民法(24頁)の例なんかはちょうどいい感じがするのですが…)

by Q.Urah