書評>司法研修所刑事裁判教官室(編)『プロシーディングス刑事裁判』

『プロシーディングス刑事裁判』

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【書誌】

コメント

 刑事裁判手続の全体像を端的にまとめた一冊。71期では白表紙のうちの一冊でした。通称「プロシーディングス」(長いので誰かセンスある略称考えてくだせえ)。

 同じく白表紙の一冊である『プラクティス刑事裁判』(『プラ刑』)に比べ,刑事裁判手続の基礎的な部分を扱っているということで,手続に不安のある人は導入修習前に読んでおくようにと,事前に送られてくる紙面に書かれておりました。こういう指示がなされるくらいですから,内容は手続の全体像を図表で説明するなど,できるだけ手続のイメージを付けられるように工夫されています。公訴提起から(公判前整理手続を行う前提で)結審に加え,勾留要件まで,刑裁修習で行う内容が全体的にバランスよく記されています。『プラ刑』と比べると,内容が平易というより,公判前整理手続に割く紙面を減らした分,刑裁でやる内容全部を網羅しようとしている感があります。

 内容面の注意としては,100頁強に圧縮しているので,刑裁修習等で起案をする際は,本書だけでは済まず,本書はどういう部分が問題になっているか目途をつけるための一冊になることがあります。当然といえば当然ですが,コンメンタール類や判例調査は各自行いましょう(ただ,こういう用途に使うとなると脚注が手薄な白表紙は結構弱いとも思える…)。あと,冒陳・論告弁論のところなど,ところどころ『プラ刑』を持っている前提で記されている箇所があります。白表紙でもらった場合,セットになっているはずなので問題ないのですが,法科大学院等で法曹会バージョンを用いる場合は注意しておくべきかと思います。

 刑裁教官も『刑事事実認定ガイド』,『プラクティス刑事裁判』と合わせ,本書はよく読むようにおっしゃっていたので,修習期間を通してお世話になる一冊かと思います。研修所の最初の指示内容からすると,中身が薄いように誤解するかもしれませんが,よく使うから押さえておかなければならないポイントを端的に説明するとこうなる,という内容をしっかり記した一冊なので,刑事裁判を扱おうという方には重要な一冊になるのではないかと思います。

by Q.Urah