書評>新城道彦ほか『知りたくなる韓国』

『知りたくなる韓国』

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【書誌】

コメント

 定評ある研究者がそれぞれの専門を生かして,韓国史,韓国政治,韓国社会,韓国文化の4パートを執筆し,融合させた1冊。ヘイト本の方が勢力が強い中,まっとうな書籍で平積みになっているよいケースのようです。

 14世紀末の朝鮮王朝成立から現在の文在寅政権までの政治史が,日本・中国をはじめとした国際関係も取り込みながら,端的にまとめられています。また,韓国における家族観や教育,食文化などの韓国社会や文化にも触れられており,「知りたくなる」という書名どおり,幅広い側面から韓国に対する興味関心を引き立て,理解を深められるような作りになっています(GSOMIA破棄とかそういう話が出た時は某著者がTwitterで「もう知らんわ」と言いたくなったそうですが)。

 近年ニュースになったところだと,徴用工問題で韓国最高裁が新日鐵住金(当時)に損害賠償の支払いを命じる判決を下したとか,GSOMIA破棄といったような話があると思います。例えば,「徴用工問題とは」という点であれば,103頁以下に,第2次大戦時に国民徴用令で「連行」された背景や,その後日韓両国間で折り合いをつけた点が触れられています。社会・文化についても,受験競争とか整形とか,キーワードとして耳にするような事項を広く説明しています。

 広範囲にわたる事項を簡潔にまとめた書籍で,本書だけだと踏み込みが足りないという感がどうしても生じてしまいます。ですが,参考文献やブックリストも付されているため,さらに学ぼうとする人への配慮にもあふれています。

 「もう知らんわ」と言いたくなるようなことも多い隣国だからこそ,逆に知ろうとすることが大切になるところ,本書は,冷静に韓国を知ろうとする人にとって,格好の一冊になるのではないでしょうか。

by Q.Urah