書評>八木信一=関耕平『地域から考える環境と経済ーアクティブな環境経済学入門』
『地域から考える環境と経済ーアクティブな環境経済学入門』
【書誌】
- 著者:八木信一=関耕平
- 発行所:有斐閣
- 出版年:2019年3月30日(初版第1刷)
- 定価:2,090円(本体 1,900円)
- ISBN:978-4-641-15067-6
コメント
「地域」を軸に書かれた環境経済学の入門テキスト。有斐閣ストゥディアシリーズの一冊です。
各章は,「テーマと出会う」という,ゲンバくん,チイキさん,ぽっぽー先生の3名(2名+1羽?)の会話パートから始まり,その章のテーマないし概要が示されます。その上で,「テーマを理解する」として,具体的な地域の事例を取り上げ,その章で扱うテーマが自治体等で実際にどのように取り扱われてきたのか検討されます。そして,「テーマを考える」として,抽象的なモデルや理論を取り上げ,具体例を見直せるように構成されています。
一応環境経済学ということになっていますが,環境問題自体の紹介であったり,環境政策の検討であったりにもなっています。このあたりは不可分なものなのでしょう。実際の自治体レベルでの取り組みが紹介されており,イメージがつかみやすいので,教養課程等で扱うには非常に適した一冊なのではないでしょうか。
また,駒場の人文地理学教室など,地理学関係の学科への進学を検討されている方は,本書の記述を興味深く読めるのではないかと思います。第4章の「農が育む環境」で記載されている「持続可能な農村」への取り組み,特に環境保全型農業は,駒場の頃フィールドワーク(私の年は安芸市の園芸農業)で扱った内容を思い出させるものでした。
ストゥディアシリーズの入門書ということで,内容はかなりコンパクトです。さらに学びたい方は,巻末ブックガイドや公式ホームページ掲載のリンク集を活用して,他の文献に当たる必要もあるでしょう。各章に関して,有用なリンクが本書のホームページ(上のカバー写真をクリックすると飛べます)にエクセルでまとめて紹介されています。関心のある方はこちらも参照されるとよいと思います。
しかしまあ,ろけっとぽっぽーを言い間違え段階から見てきた,1ぽっぽーファンの立場からすると,こういう風にぽっぽーさんが有斐閣書籍にまで登場するようになったというのは感慨深いものです。
by Q.Urah