書評>司法研修所(編)『新問題研究 要件事実 付―民法(債権関係)改正に伴う追補―』

『新問題研究 要件事実 付―民法(債権関係)改正に伴う追補―』

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【書誌】

コメント

 要件事実の入門書として定番の一冊。法科大学院の民事実務基礎では間違いなく教科書指定されるのではないでしょうか。71期では,白表紙にも含まれていました。

 取り上げられる要件事実は,最も基本的なもの(主張が入り組んでいない売買,消費貸借等)です。各章冒頭に短い当事者の言い分が掲げられており,それに基づいて当該章で扱う請求原因,抗弁を取り上げる形で展開していきます。

 本書は,完全に要件事実への入門を意識して書かれている一冊なので,網羅性はありません。二回試験になると本書のレベルだけでは足りないということです(二回試験前ならこれで十分かと思って一応ググったところ,予備試験でも,本書だけでは不十分というコメントは発見しました。口述そんなにゴリゴリ聞かれたっけ?)。もっとも,シンプルな事例で,典型的な要件事実は何か,それを整理して記載するとどのように書くのか,といった内容は,短い内容の中で丁寧に書かれており,最初に読むには有益な一冊といえるでしょう。

 まあ,71期時点では白表紙にも入っていますし,ここで紹介するまでもなく皆さん一冊持っている本なのでしょう。

(追伸)2020年8月に,債権法改正を踏まえた追補が付された版が発行されました。末尾の追補で,諾成的消費貸借契約などについて,債権法改正で法律要件がどのように変わったか記載があるのですが,かなりあっさりとしたものにとどまっています。旧版の考え方が分かっていれば,条文から読み取れる内容と思いますので,わざわざ買い替える必要があるものなのかと思うところです。

by Q.Urah