日記>著作権法改正(2018.12.30)

著作権法改正

本

 こんにちは。管理人です。

 本日は著作権法改正法の施行日ですね。もともと条文をTPPがらみで変更しようとしていたところ,肝心のアメリカがTPPから抜けてしまったことでどうなるのかと思いきや,議論が湧き上がっている著作権保護期間の延長については何の変更もなくそのまま通ってしまいました。

 保護期間については著作者の死後(共同著作物なら最終に死亡した著作者の死後)50年から70年に延長されました(著作権法51条2項)。無名又は変名の著作物とか団体名義の著作物についても同様で,公表/捜索後50年から70年に延長されています(同法52条1項,53条1項)。

 アメリカの某企業なんかは保護期間延長で得をするといわれていますが,今の日本法でこの時期に70年に延長する必要性というのはどれほどあるのか疑問はあるところです。むしろ文化の発展という観点からは,保護期間は区切って,パブリックドメインとしたうえで自由に活用できるようにした方が適切であるという議論も強いところ,今回の法改正はいかがなものだろうかと思います(経済学的分析は林紘一郎先生編著の『著作権の法と経済学』とか『著作権保護期間』(いずれも勁草)が冷静に分析されており,詳しいと思います。)。20年間パブリックドメインとなる作品が生じなくなった場合,どれほどの作品が埋没してしまうのでしょうか。決して国際協調(アメリカは延長方針ですが)というわけでもないので,我が国における延長の立法事実たるやいかに。

 しかも(微妙に過剰な処罰がなされないよう条文上にも配慮が表れているとはいえ,)非親告罪化までなされてしまいました。著作物で利益を上げる人は,刑事罰も望むのであれば積極的に告訴するでしょうし,親告罪という立て付けでよかったと思うのですが…

P.S. 手許にいい素材がないときにフリー素材があると助かる…というわけで今後は著作権保護が特段の必要もなく延長されてしまったので,著作権法による創作の促進というより,法の余白,コモンズの発想からの創作の促進という発想も重要になってくるのではないかと思うこの頃です。とはいえ勝手に使ってくださいと思っている人がわざわざCCマーク出すとかそういう手間をかけるというのも多くはないでしょうから,非親告罪化の萎縮効果ってやっぱり働きますよね…