日記>話題の最高裁判例(1)―不貞行為の相手方に対する離婚に伴う慰謝料請求の可否

話題の最高裁判例(1)―不貞行為の相手方に対する離婚に伴う慰謝料請求の可否

鞍馬

 こんばんは。管理人です。今回からの新コーナーを始めようと思います。

 夫婦の一方が,離婚に伴い,不貞行為の相手方たる第三者に慰謝料請求できるかという点に関し,最高裁判例が出たので,今日はこれについて触れたいと思います。

 早速判決文が出ている(早くなりましたね…)ので,判断枠組みに当たる部分を抜粋します。

 「夫婦の一方は,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ,本件は,夫婦間ではなく,夫婦の一方が,他方と不貞関係にあった第三者に対して,離婚に伴う慰謝料を請求するものである。夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。

 したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

 以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。

 本判決からすれば,不貞行為による慰謝料請求と不貞行為による離婚に伴う慰謝料請求が分けられることになるように思われます。そうすると,これらの慰謝料をどう切り分けるのか(不貞行為による慰謝料請求の方にまとめられるか)といった問題は生ずるように思われます。不貞行為が発覚して慰謝料を支払った場合で,その後離婚に至った場合,どう処理するのか,実務上問題はあるのだと考えられます。また,離婚が不貞行為より後に生ずる関係上,時効の起算点もよく検討しなければならないように思われます。

 もっとも,本件は不貞行為解消後から離婚まで4年9月ほどの間隔があるなど,本件の事案だからあくまで慰謝料請求できないものとしたと考えうるところです。どこまで本判決を一般化できるかは注意を要するでしょう。この点については,「夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情」がどういうものなのかという問題にもつながり,依然として今後の事例の集積に待つべきところは大きいと思われます。