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東京地判平成26年10月30日裁判所HP参照

主文

 1 被告は,別紙物件目録記載の製品を製造し,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡の申出若しくは譲渡のための展示をしてはならない。

 2 被告は,別紙物件目録記載の製品及び半製品(別紙物件目録記載の構造を具備しているが製品として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。

 3 被告は,原告に対し,79万4000円及びうち28万3500円に対する平成25年12月18日から,51万0500円に対する平成26年6月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 4 原告のその余の請求を棄却する。

 5 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の,その余を被告の各負担とする。

 6 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求

 1 主文1,2項と同旨

 2 被告は,原告に対し,434万円及びこれに対する平成25年12月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

 本件は,発明の名称を「シートカッター」とする特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が,被告による別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)の製造,譲渡等が本件特許権の侵害に当たるとして,被告に対し,特許法100条1項に基づく被告製品の製造,譲渡等の差止め,同法2項に基づく被告製品等の廃棄並びに民法709条及び特許法102条2項に基づく損害賠償金105万0200円及びこれに対する平成25年12月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(なお,損害賠償請求につき請求の減縮はない。)。

 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

 (1) 原告及び被告は,シート状の紙,フィルム等を断裁する装置・器具であるシートカッター等の職人用工具を企画,製作,販売している個人事業主である。

 (2) 原告は,次の特許権(本件特許権)を有している。

 特許番号  特許第5374419号

 発明の名称 シートカッター

 出願日   平成22年2月15日(特願2010-47083)

 登録日   平成25年9月27日

 (3) 本件特許権の特許請求の範囲請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この発明を「本件特許発明」といい,その特許を「本件特許」という。)。

 「第1の刃と,

 第2の刃と,

 前記第1の刃と前記第2の刃を設けた本体と,

 前記本体と可動的に接続されたガイド板とを有し,

 前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または前記第2の刃が出る

 ことを特徴とするカッター。」

 (4)ア 本件特許発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件A」などという。)。

 A 第1の刃と,

 B 第2の刃と,

 C 前記第1の刃と前記第2の刃を設けた本体と,

 D 前記本体と可動的に接続されたガイド板とを有し,

 E 前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または前記第2の刃が出る

 F ことを特徴とするカッター。

 イ 本件特許の特許出願時における特許請求の範囲の記載は,「カッターナイフの刃の横に,ガイド板(4)を設けたシートの切断道具であるシートカッター。」というものであった。本件特許は,原告が平成25年7月16日に特許請求の範囲の記載を上記(3)のとおりに補正した結果,特許査定されるに至ったものである(以下,原告の上記補正を「本件補正」という。)。なお,本件特許の特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載及び図面については補正されていない。(甲3の1,乙1)

 (5)ア 被告は,平成25年9月27日(本件特許の登録日)から平成26年6月18日までの間,被告製品を186個(中型74個,小型112個)販売し,合計83万2000円を売り上げた。

 イ 被告製品には大きさと色が異なるものが存在するが,いずれも別紙被告製品の外観のとおり,以下の構成を有している。

 a~c 刃1及び刃2が留め具4及び留め具5によって本体3(回転板)に固定されている。

 d 本体3は3か所の接続部7を介してガイド板6(固定板)に接続されている。接続部7は,本体3に設けた円弧状の溝に,ガイド板6に設けた突起部を摺動可能に嵌合したものであり,本体3に対してガイド板6は上記溝の範囲で左右に円弧状に動くことができる。

 e ガイド板6をシートに当接して固定し,本体3をガイド板6に対し左又は右に円弧状に動かすと,ガイド板6によって刃先が隠されていた刃1又は刃2がガイド板6から外へ出てくる。この状態で被告製品をガイド板6に沿って左右に動かすと,シートを切断することができる。

 f シートカッターである。(甲5,6)

 (6) 被告は平成26年1月6日付けで本件特許の無効審判請求をしたが(無効2014-800004号事件),特許庁は同年7月15日付けで被告の無効審判請求は成り立たない旨の審決をした。(乙5,12)

 2 争点及びこれに関する当事者の主張

 本件の争点は,(1) 被告製品の構成要件D及びEの充足性(構成要件A~C,Fの充足性については争いがない。),(2) 本件特許の無効理由の存否,(3) 損害の額であり,争点に関する当事者の主張は,以下のとおりである。

 (1) 被告製品の構成要件D及びEの充足性

 (原告の主張)

 ア(ア) 本件特許の特許請求の範囲の記載によれば,構成要件Dは,「本体に対してガイド板が動かすことが可能な態様でつながれている」ことを示し,構成要件Eは,「本体がガイド板に対して動くことにより,ガイド板から,本体に設けられた第1の刃又は第2の刃が出る」ことを示しており,これらの解釈に疑義は生じない。また,本件明細書によれば,本件特許発明が,課題の解決のために,本体とガイド板を動くように接続し,本体が動くことで本体に設けられたカッターナイフの刃がガイド板の外に出るような構成とすることを技術思想としていることが明らかであるから,本件明細書の記載内容も上記解釈に沿うものである。

 (イ) 被告製品の構成は前記前提事実(5)イのとおりであり,構成要件D及びEを充足する。

 イ 被告は,後記のとおり,被告製品が本件特許発明とは異なる課題を解決するものであると主張するが,被告製品は本件特許発明を利用するものであるから,同主張は法的に無意味な主張である。

 ウ したがって,被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属する。

 (被告の主張)

 ア(ア) 構成要件Dの「前記本体と可動的に接続された」と,構成要件Eの「前記本体が前記ガイド板に対して動く」は,いわゆる機能的クレームである。そのため,特許請求の範囲の記載だけではその内容を具体的に特定することができないから,特許法70条2項により本件明細書の記載を参酌し,上記の機能表現の意義を解釈しなければならない。

 本件明細書には,シャフト(3)を軸にして本体(1)を傾けたときに,本体がガイド板(4)に対して回転することが記載されているが,かかる構造以外の,回転軸となるシャフトが存在しないものや複数のシャフトによって本体の回転以外の動きを制御するものについて具体的な開示はないし,これを示唆する表現もない。そのため,本件特許発明は本件明細書に記載された上記構造のものに限定されるべきであり,構成要件Dは「該シャフトに係合し,該シャフトを軸に回転するガイド板とを有し,」と,構成要件Eは「前記本体を,該シャフトを軸に前記ガイド板に対して傾けた時に,前記本体が前記シャフトを軸に回転して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または第2の刃が出る」と解釈されるべきである。

 (イ) 被告製品は,シャフトを3本設け,これらによってガイド板の動き方をガイドしており,ガイド板の回転軸となるシャフトは存在せず,シャフトを軸に本体を傾けるという操作もできないから,構成要件D及びEを充足しない。

 イ 被告製品は,単なるシートカッターではなく,ガイド板を直接手で操作することによりヘラとしても使用することができる壁紙用ヘラカッターである。被告製品は,本件特許発明の課題とは異なる課題を解決するものであり,本件特許発明とは異質のものである。

 ウ したがって,被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属しない。

 (2) 本件特許の無効理由の存否

 (被告の主張)

 本件特許には以下の無効理由があるので,原告による本件特許権の行使は認められない。

 ア 本件特許は,本件補正により特許請求の範囲が補正されることによって特許査定されたものである。しかし,本件明細書には,シャフトを中心に本体が回転する態様以外の態様は記載されておらず,これを示唆する記載すらない。そのため,本件補正後に付加された構成要件Dの「可動的に接続された」及び構成要件Eの「前記本体が前記ガイド板に対して動く」との各文言は,本件明細書の記載によって支持されていない態様を含み得るものであり,本件補正によって導入された新規事項に当たる。

 したがって,本件特許は,特許法17条の2第3項の要件を満たさない補正をした特許出願に対してされたものであり,同法123条1項1号の規定により無効にされるべきものである。

 イ 仮に被告製品が本件特許の特許請求の範囲に属するというのであれば,被告製品のような構成は本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていないから,本件特許は,特許法36条6項1号の規定に違反して特許されたものとして,同法123条1項4号の規定により無効にされるべきものである。

 ウ 発明の明確性とは技術的明確性をいうものであり,構成要件Dの「可動的に接続された」との文言は,本体とガイド板を単に紐で繋いだ態様も含むことになり,このような実施不可能ともいえる態様も包含する記載内容は技術的に不明確である。本件特許は,特許法36条6項2号の規定に違反して特許されたものとして,同法123条1項4号の規定により無効にされるべきものである。

 (原告の主張)

 ア 本件特許発明として特許請求の範囲に記載された発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に現れている。本件補正後の本件特許の請求項1は,本件特許発明が解決しようとする課題との関係では新たな技術的事項を導入するものではなく,補正された請求項の構成は,依然として当該技術的課題を解決することになるから,新規事項の追加には当たらない。

 イ 本件明細書に接した当業者は,本体がガイド板に対して動くことによってガイド板から刃が出るような構成を採ることによって,本件特許発明の課題を解決できることを容易に認識できるから,本件特許発明は発明の詳細な説明に記載されたものといえる。

 ウ 本件明細書には,本体とガイド板との接続態様及び本体がガイド板に対して動く態様が記載されている。そのため,本件特許発明の特許請求の範囲は,当業者が本件明細書を参照して理解することにより明確であるといえ,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な内容は含んでいない。

 (3) 損害の額

(原告の主張)

 被告製品の製造原価は,中型のものにつき500円であり,小型のものにつき400円である。したがって,被告が平成25年9月27日から平成26年6月18日までの間に被告製品を販売することによって得た利益は,売上額から上記製造原価分を差し引いた合計75万0200円となり,特許法102条2項により同金額が原告の損害の額と推定される。そして,被告による本件特許権の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額は30万円を下らないから,原告の損害の額は105万0200円となる。

 (被告の主張)

 争う。被告製品の製造原価は,中型のものにつき1400円,小型のものにつき1200円であり,被告が得た利益は59万4000円である。

第3 当裁判所の判断

 1 争点(1)(被告製品の構成要件D及びEの充足性)について

 (1) 本件特許の特許請求の範囲には,構成要件Dとして「前記本体と可動的に接続されたガイド板」と,構成要件Eとして「前記本体が前記ガイド板に対して動くことにより前記ガイド板から前記第1の刃または第2の刃が出る」と記載されており,その文言上は,本体がガイド板に対して動くとガイド板から刃が出てくるものであれば足り,本体とガイド板の接続態様や本体の動き方についての限定はないということができる。しかし,構成要件Eの上記文言は,発明の構成をそれが果たすべき機能によって特定したものであり,いわゆる機能的クレームに当たるから,上記の機能を有するものであればすべてこれを充足するとみるのは必ずしも相当でなく,本件明細書に開示された具体的構成を参酌しながらその意義を解釈するのが相当である。そして,構成要件Dの「可動的に接続された」との構成についても,構成要件Eと整合するように解釈すべきものと解される。

 (2) 本件明細書には発明の詳細な説明として以下の記載がある。(甲9)

 ア 技術分野(段落【0001】)

 「 この発明は主に床材のノンスリップシートなどの凹凸を利用して,シートを切断する道具である。」

 イ 技術背景(段落【0002】)

 「 従来,直定規とカッターナイフを使用して,シートを切断していた。」

 ウ 発明が解決しようとする課題(段落【0004】)

 「 従来の欠点は,直定規とカッターナイフでノンスリップシートなどの凹凸に沿って,真っすぐ切断する際,光の向きや照度により見づらく,きれいに切断しにくかった。

 本発明は以上のような欠点をなくすために作られた作品である。」

 エ 課題を解決するための手段(段落【0005】)

 「 本体(1)の中に,カッターナイフの刃(2)を設け,シャフト(3)の通ったガイド板(4)を設ける。  本発明は,以上の構成によりなるシートカッターである。」

 オ 発明の効果(段落【0006】)

 「 このシートカッターはノンスリップシートなどの表面の凹凸に,ガイド板(4)を合わせ,シャフト(3)を軸に本体を傾けるだけで,設けてあるカッターナイフの刃(2)が出てくる。後はノンスリップシートなどの凹凸に沿わせ滑らせるだけで,光の向きや照度に左右される事なく,簡単できれい,かつ迅速にノンスリップシートなどを切断できる。」

 カ 発明を実施するための形態(段落【0008】)

 「 本体(1)の中にカッターナイフの刃(2)を設け,シャフト(3)を軸にスイングするガイド板(4)を設ける。

 本発明は以上のような構造である。

 これを使用する時は,ガイド板(4)をノンスリップシートなどの表面の凹凸に合わせ,シャフト(3)を軸にして本体(1)を傾けカッターナイフの刃(2)を出す。

 後は凹凸に沿わせて滑らせ,ノンスリップシートなどを切断する。

 その他の応用例として,壁紙の施工時,入り隅や枠の凹凸に沿わせ,後は同様にシートカッターを滑らせる事により,壁紙の余分な部分を,地ベラや定規を使用せず切り取る。」

 (3) 本件明細書の上記記載によれば,「前記ガイド板から前記第1の刃または第2の刃が出る」との機能を果たすための本体のガイド板に対する動き方として本件明細書に開示されているのは,本体をガイド板に対して傾けること(上記(2)オ,カ)及びスイングするガイド板を設けること(同カ)であり,要するに本体をガイド板に対して傾け,又は回転運動させるということである。そして,本体をガイド板に対して左右に傾け,又は回転運動させた場合には,本体の左下又は右下の端部がガイド板から外に出るから,本体の左下及び右下の端部に第1及び第2の刃の各先端を位置させておけば,本体を傾けるだけで刃が出てきて,あとはノンスリップシート等の凹凸に沿わせて滑らせるだけで簡単,きれいかつ迅速に切断できるという本件特許発明の効果(同オ)を奏すると認められる。そうすると,構成要件Eの「動く」には少なくとも回転運動が含まれるとみることができる。

 次に,本体がガイド板に対して回転運動するように「可動的に接続」すること(構成要件D)についてみるに,2枚の板状の部材を回転可能に接続する態様としては,① それぞれの中心部分をシャフト等により軸着する構成のほか,② 一方の周辺部に円弧状の溝等を設け,この溝等に他方を摺動可能に取り付けるといった構成を採用し得る。このうち本件明細書に明示されているのは①の構成のみであるが(上記(2)エ~カ),いずれの構成であっても特許請求の範囲にいう「可動的に接続」に該当し,かつ,本件特許発明に係る課題を解決して上記の効果を奏すると考えられる。したがって,②の構成も構成要件Dの「可動的に接続」に含まれると解すべきものである。

 (4) 被告製品は,前記前提事実(5)イのとおり,本体3(回転板)とガイド板6(固定板)が円弧状の溝を有する接続部7を介して接続され,本体を左右に傾けてこの溝に沿って円周方向に動かすと,刃1又は刃2がガイド板から外に出るように構成されている。したがって,被告製品は,構成要件D及びEを充足し,本件特許発明の技術的範囲に属すると認められる。

 (5) これに対し,被告は,① 本件特許発明の技術的範囲は本件明細書に開示された構成(本体とガイド板がシャフトにより接続され,本体がシャフトを軸にしてガイド板に対して回転する構成)に限定して解釈されるべきである,② 被告製品は本件特許発明とは異なる課題を解決するものであるから,本件特許発明の技術的範囲に属しない旨主張する。

 そこで判断するに,①について,上記(3)に説示したところによれば,本体とガイド板を回転可能に接続するに当たり,シャフトにより軸着するか,円弧状の溝に摺動可能に嵌合するかは,当業者が適宜選択し得る実施の形態にすぎないということができる。また,②について,被告製品が本件特許発明の構成要件を充足し,その効果を奏することは上記(3)及び(4)のとおりであるから,被告製品が本件特許発明と異なる課題をも解決するとしても,この点は上記の判断に影響するものではない。

 したがって,被告の主張はいずれも採用することができない。

 2 争点(2)(本件特許の無効理由の存否)について

 (1) 被告は,本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものであることの理由として,① 本件補正によって追加された構成要件D及びEが新規事項であること,② 特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載されていないこと,③ 特許請求の範囲の文言が明確でないことを主張する。

 (2) そこで判断するに,①について,本件明細書(なお,発明の詳細な説明の記載は出願当初から変わっていない。)には,前記1(3)のとおり解釈される構成要件D及びEが記載されているということができる。したがって,本件補正が特許法17条の2第3項に違反するものとは認められない。

 また,②及び③について,前記1(3)で判断したところによれば,本件明細書に接した当業者は,その記載から本件特許発明における課題及びその解決手段を認識することができると認められる。したがって,本件特許が同法36条6項1号に違反するとも同項2号に違反するともいうことはできない。

 (3) したがって,被告の主張はいずれも失当である。

 3 争点(3)(損害の額)について

 (1) 被告製品の販売利益相当額について

 前記前提事実(5)アのとおり,被告が,平成25年9月27日から平成26年6月18日までの間,被告製品を186個(中型74個,小型112個)販売したこと,その売上が83万2000円であることは当事者間に争いがない。この販売行為による被告の利益の額(特許法102条2項)を算出するに当たり,製造原価として原告は中型500円,小型400円を,被告は中型1400円,小型1200円を控除すべき旨主張するところ(他の経費等を差し引くべき旨の主張はない。),証拠(乙11)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品の製造原価は中型のものが1400円,小型のものが1200円であると認められる。

 そうすると,被告が上記期間に被告製品を販売することによって得た利益の額は59万4000円であり,これが原告の損害の額と推定される。なお,原告は訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求めるが,その後の販売分に係る51万0500円(乙9,10参照)についての遅延損害金の起算日は,本件訴訟の経過に鑑み,不法行為の後である平成26年6月18日と認める。

 (2) 弁護士費用について

 本件事案の内容,審理の経過等に鑑みれば,被告による特許権侵害と相当因果関係のあるものとして被告に負担させるべき弁護士費用の額は20万円を相当と認める。

第4 結論

 以上によれば,原告の請求のうち被告製品の差止め及び廃棄等を求める部分は理由があるからこれを認容し,損害賠償を求める部分は79万4000円及びうち28万3500円に対する平成25年12月18日から,51万0500円に対する平成26年6月18日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余を棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,主文2項についての仮執行の宣言については,相当でないので,これを付さない。

    東京地方裁判所民事第46部