裁判例>最判昭和57年3月30日集民135号461頁

最判昭和57年3月30日集民135号461頁

主文

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

理由

 上告代理人村林隆一、同今中利昭、同宇多民夫、同原田弘の上告理由について

 上告人らの本訴請求は、被上告人らの手芸用糸入れ金属編籠の製造販売行為が上告人戸田の有する登録第571193号実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)及び上告人アートメタル株式会社の有する実用新案権の独占的な通常実施権を侵害したものであると主張して、被上告人らに対しそれによる損害の賠償を請求するものである。

 しかしながら、本件実用新案登録に係る考案が、その登録出願時において新規性を有しなかつたことを理由として右登録を無効とすべき旨の審決の確定したことは、当小法廷が昭和55年(行ツ)第九号及び同第10号各審決取消請求事件につきそれぞれ昭和55年4月8日に言い渡した判決に徴し、顕著である。そして、このような理由により右実用新案登録を無効とすべき旨の審決が確定した場合において、その実用新案権が初めから存在しなかつたものとみなされることは、実用新案法41条によつて準用される特許法125条本文の規定により明らかである。

 したがつて、本件実用新案権が存在することを前提とする上告人らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないことが明白であるから、棄却されるべきものがある。してみれば、これと結論を同じくする原審の判断は、結局、正当であることに帰する。論旨は、採用することができない。

 よつて、民訴法396条、384条2項、95条、89条、93条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 寺田治郎 裁判官 環 昌一 裁判官 横井大三 裁判官 伊藤正己)