書評>山本敬三『民法の基礎から学ぶ民法改正』

『民法の基礎から学ぶ民法改正』

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【書誌】

コメント

 民法の第一人者であり,債権法改正の審議会委員も務めた著者が,基本的な部分から今回の民法改正の内容を解説した一冊。

 本書は,改正民法を民法の現代化,透明化という改正目的として掲げられた2つの視点を軸にして,どういう点で規定が具体化されたか,分かりやすくなったのか,あるいはどういうところが現代の取引活動を意識したものになったのか,概説するものです。民法は私法の基本法というだけあり,今回の改正についても膨大な資料・書籍が存在しますが,法律は専門外という方が「民法改正って何だろう?」,「なんで民法を大きく変えることにしたんだろう」と思ったとき(こんなこと考える人がいるのかはさておく)にまず手に取ると良い一冊だと思います。また,基礎から説明するというスタイルをとっており,コンパクトにまとめられているので,民法の講義が始まったばかりの学部2年生やロースクール未修コースの方にも,従来の民法と改正法を概観するための初めの一冊として勧められます。帯で「最良の入門書」と謳っていますが,あながち言い過ぎでもない感じがします。

 予備試験・司法試験レベルで少しお勉強した人でも,学習すれば絶対に触れるであろう基本概念を丁寧に書くとこうなるのかと参考になりますし,改めて改正法を勉強しようというときに,膨大な審議会の部会資料・議事録に手を付ける前に改正のポイントを確かめるのに適した本といえるでしょう。

 著者も指摘しているように,細部の解説は目的としていないので,ゼミ等で債権法改正を研究した人には物足りないかもしれません。そういう人はとりあえず部会資料と議事録を黙って読みましょう。あと,どう改正しても何かしら分かりにくい部分は出てきてしまうので仕方ないといえば仕方ないのですが,詐害行為取消権の辺り,やっぱりわかりにくい民法だよなあと思ったのはわたくしだけではないはず。

 民法の概観と法改正の両方を視野に入れられるので,法学入門の指定図書にもよいのではないでしょうか?

by Q.Urah