書評>横田明美『カフェパウゼで法学をー対話で見つける〈学び方〉』

『カフェパウゼで法学をー対話で見つける〈学び方〉』

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【書誌】

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 ぱうー。横田先生のブログ連載をもとにした,大学・法学部での学び方ないし生活を記した一冊。

 ぱうぜ先生と学生の会話をもとに,大学でどう学んでいくのか,レポートや卒論はどうするのか,進路はどうなのか…といった大学生活のいろいろが書かれています。

 前半部は法学部に限らず,大学生活一般で,暗黙知としていつのまにか身に着けるものとされていた部分を,あえて言語化したもので,学部1,2年生にとって有益でしょう。一方,本書の後半を読んでいると,今絶版になっている大村敦志ほか『民法研究ハンドブック』(有斐閣,2000)を思い出しました。これは研究者志望の人が対象になっていたのですが,レポートないし卒論に向かう学部生にとって,本書の第3,4部の記述は,上記文献の代わりになるのではないかと期待しています。

 印象的な部分としては,まず,「鳥の目,虫の目」という,言われてみればまっとうだがなかなか実践できない部分を,本書自身で実践できるようになっているところです。ぱうぜ先生ほかの会話部分を見ていくと,本書の概略がつかめ,本文を読むことでより細かく内容を把握できるという仕掛けです。また,(入学間もない学生が読むことを想定しているのに)手続法を重視しているのはなかなか珍しいように思いました。法学部のカリキュラムは実体法をまずやって,手続法はその後と配置されているはずで,「手続は実体のはしため」と言われることもあるほどです(これはこれで合理性がありますが)。一方,本書で言われているように,手続面を頭に入れておくことで,実体法の理解に資するところもあります。何周もする前提の記述ではありますし,バランスが問題となるところではありますが,本書で挙げられたような,判例を読む上での必須用語等(「棄却」と「却下」等)は軽くさらっておくとよいというのは,もっともでしょう。

 とはいえ,本書に書かれている内容をどこまで学部生が実践できるかと考えると,なかなかのスペックが要求されそうな気がします。あと,本書は暗黙知であったり,既に書かれてきたことをあえて説明しているという部分も多いので,本書の注に挙がっている文献(戸田山和久『新版 論文の教室』(NHK出版,2012)等)をすでに読んでいるとなると,気になる部分だけブログ記事を参照するという形でもよいかもしれません。

 法学部進学を考えている学部1年生のみならず,他学部の学生にも有益ですし,高校生が読んでみるのもよいように思います。お勧めできる一冊なのでぜひ(Twitterで「#カフェパウゼで法学を」と検索すると各方面からの推薦の声が見られます)。

 (東大ローの修了生同窓会で撮らせていただいた見本写真withぽっぽーさん)

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by Q.Urah